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『ONE PIECE』に『幽☆遊☆白書』――Netflixによる実写ドラマ化はなぜ成功したのか

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Netflixシリーズ『ONE PIECE』独占配信中 ©尾田栄一郎 集英社

 VOD(配信サービス)大手のNetflixの勢いが止まらない。2023年に日本の人気漫画『ONE PIECE』『幽☆遊☆白書』(ともに集英社)の実写ドラマを制作・配信すると、実写『ONE PIECE』は世界93カ国でNetflix公式ランキングにトップ10入り、46カ国で初登場1位を獲得する人気ぶり。実写『幽☆遊☆白書』のほうも、Netflix週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)で初登場1位を獲得したほか、英語を含めた全言語シリーズでも全世界2位という成績で、日本初の漫画実写化シリーズとして歴代最高記録を達成した。

 日本の漫画の実写化が国内だけでなく世界中で評価され、高い人気を誇っているのだ。日本の漫画がハリウッドなど海外で実写化されることは以前からあったことだが、その多くは失敗に終わっていた。古くは『ドラゴンボール』(集英社)を実写化した『DRAGONBALL EVOLUTION』(09年)――原作者の鳥山明が「別次元の『新ドラゴンボール』として鑑賞するのが正解」というほど別モノになっていた――、『攻殻機動隊』(講談社)の実写化『ゴースト・イン・ザ・シェル』(17年)、そして去年も『聖闘士星矢 The Beginning』が、製作費およそ80億円とされるなかで全世界累計興行収入が10億円強に留まる「失敗」に終わった。

 多くの実写化作品“失敗”の理由は、「コレジャナイ!」の一言に尽きる。原作とはかけ離れた設定とキャラクター、原作から改変されすぎてまったく魅力のない物語にされてしまうのだ。今は成功作を連発しているNetflixでさえ、かつては『Death Note/デスノート』というズッコケ作を出していたりする。

 実写版『ONE PIECE』『幽☆遊☆白書』も配信される前は、実写化に対するファンからの不安の声がネット上にあふれていたが、配信後はすべて絶賛に取って代わられた。なぜこれらの作品は成功したのか、そしてそもそもなぜ実写化がされたのか。筆者の考えを綴っていきたい。

「スーパーヒーロー映画疲れ」によるアメコミ不振という好機

 昨今のハリウッドにおけるコミックの実写化といえば、マーベルやDCといったアメリカンコミックだ。かつてはランキング上位を独占していたアメコミ映画だが、近年は不振が続いている。昨年公開の『マーベルズ』はオープニング成績がマーベル・シネマティック・ユニバース歴代最低となり、DCの話題作『ザ・フラッシュ』も期待通りの数字を稼げなかった。

 これらのシリーズは、世界設定やストーリー、キャラクターなどを複数の作品にまたがって共有するシェアード・ユニバース(共有宇宙)であると位置づけられているため、一つの作品を深く理解するためには他の関連作品も観なくてはならない。さらにDisney+で配信されているドラマ版まで追いかける必要もあり、そこまでして観る気力・時間のないファンは「スーパーヒーロー映画疲れ」という現象を起こし、これが興行成績の低下につながっている。

 こうした状況の中で登場したのが、海外でも人気のあった日本の名作漫画の実写化となった『ONE PIECE』と『幽☆遊☆白書』だ。その作品の中だけで世界観が完結しているから、他の作品を“勉強”しなくてもよい。また『ONE PIECE』は1シーズン8話、『幽☆遊☆白書』は1シーズン5話とコンパクト。これなら一気見したって疲れない。

 製作費についてもコンパクトで、マーベルスタジオ制作のドラマは1話につき製作費が2500万ドル(およそ37億円)ほどとされているが、『ONE PIECE』は1800~2000万ドル(およそ27~30億円)とのこと。これで成功したのだから、大金を投じても見返りが少ないアメコミ映画より、コンパクトな予算でリターンの大きい日本の漫画実写化のほうが喜ばれているのかも。(→P2〈原作を尊重するようになり、潤沢な予算で「実写化」を実現させるNetflix〉

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