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イベントを”サステナブル”に 新しいフックが刺さる新感覚イベント『福渋』とは

編集部

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 地方創生が声高に叫ばれる昨今、地方の魅力を発信するべく東京でも数多くのイベントが行われている。その中の一つとして、2011年の東日本大震災で大きな被害を受け、未だ復興の途中である福島県をフィーチャーする形で『〜渋谷から福島をつなぐ〜リバイタライズプロジェクト』の初回として『福島復興イベント”福渋”』が2024年1月26日〜27日に開催された。

 主催者が「再開発が進む渋谷から福島の本来の魅力と新しいカルチャーを発信」と銘打った”福渋”だが、まさに新しいイベントカルチャーの創出となりうる可能性が秘められていた。

SNSでのアクションを誘発する仕掛け

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 ”福渋”のイベント会場となったのは渋谷駅からほど近いレオン・インターナショナルのショールーム。アメリカンラグシーなどを展開するアパレル企業がこういった復興イベントを主催するのも珍しいケースだが、それ以上に珍しいのが会場内の光景だ。

 ショールームには所狭しと福島県の農家や300年以上の歴史を誇る酒造といった生産者が並び、さらには福島の古着屋『mel EURO VINTAGE』などのアパレルも。東京側からもアパレルショップやケータリングが出展しており、地方発信イベントではなかなか見かけないほど若者が多いことが印象的だった。

 特に人が集まっていたのが会場中央に設置された回転レーン。まさに回転寿司で見かけるレーンの皿には福島県産の食材を使ったフードやノベルティが載せられて、気軽に手に取りやすい雰囲気を演出。スマートフォンで撮影してSNSへ投稿する参加者が多いのも頷ける光景だった。

 この光景を仕掛けたのは、イロエンターテイメントの色川裕哉氏。地方から新鮮な野菜を都心へ届けて話題の代官山青果店のディレクターとしても活躍しており、日本全国の地方課題解決に取り組んでいる。

 様々なフックをイベントに用意する色川氏だが、話を聞いてみるとやはりというべきか。「おもしろさ」へのこだわりが見え隠れする。

イベントを記憶に残すために

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「福島に毎週行ってたんですが、福島独自のカルチャーみたいなものがあるなと思っていたし、イケイケな生産者の方が多いと思っていたんですよね。もちろんネットなどで福島のカルチャーや魅力を発信されている方もするのですが、どこかで発信しきれていない気もしてもったいないなと。

 一方、東京はカルチャーを地方に向けて発信していますが、東京だけが発信していてもおもしろくないなと。地方と東京の若い人たちのカルチャー同士がぶつかりあって新しいカルチャーを作り出すのがおもしろいんじゃないかと」

 その「おもしろさ」をしっかりと参加側が発信するためのフックの一つが回転レーンなのだとか。

「ノベルティの配布にしても、机の上に乗せて渡していてもSNSには載らないんです。撮影してもらうために、記憶してもらうためにはどうするかということも色々考えている感じですね。

 以前、蛇口をひねるとジュースが出てくるという仕掛けを作ったんですけど、そのジュースは生産者さんが廃棄する予定の果物から作っていたんです。ただ単純にフードロスを減らすために商品を作るだけでは記憶に残らないけど、蛇口から出るだけで、みんなの興味が急に湧いてきたりするわけです」

 売り方や見せ方を変えることで、よりメッセージを伝えやすくする。こうした仕掛けは、集客のための「入り口」についても用意されている。

「イベントの入り口をなるべくフラットに、簡単にできればと思っています。今回のようにアパレルショップがたくさん出展していて『オシャレ』だったり、福島の『めちゃくちゃ美味しいものあるよ』だったり。最初から”復興”とすると真面目さが重かったりして集客できないイベントも多いんです。入り口をフラットにすることで参加しやすくして、その中で興味を持ったり、コミュニティに参加して繋がっていけばいいとは思っていますね」

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 実際に福島からの出展者と話し込むイベント参加者は多かった。また、1月1日に発生した能登半島地震への災害義援金専用酒を、東日本大震災で被災した福島県浪江町鈴木酒造店が販売していたのだが、持ち込んだ瓶全てが完売していた。

「自分自身も発信している側なので分かるんですが、実際にこういう場所に連れてきたほうが発信されやすいんです。東京と地方では、やっぱり距離はまだまだあるので。さらにこうしたイベントはビジネス的にもしっかりと維持していかないとただの趣味になりがちなんですよね」

 そのために、レオン・インターナショナルではメタバースの活用も検討しているそうだ。

「地元の方たちと東京が同時に繋がれるっていう意味では、すごく重要なシステムかなとも思っていて。過去にもアメリカンラグシーのバーチャルショップを展開したことがあるのですが、そこでの経験を活かして、メタバース上に福島県を再現して生産者なども参加できるプラットフォームにしていきたいんですよね。アパレル企業がファッションの新しいことをやってもファッションに興味のある人しか注目してもらえませんが、アパレル企業が普段なかなかやらないことにチャレンジすれば、多くの人の興味を引くことができると考えています」

 リアルイベントから仮想空間上のコミュニティへの”持続可能性”を探る。まさにサステナブルを体現する新しいカルチャーが、これからの”福渋“のおもしろさに繋がっていくのだろう。

イベント参加ブランド
・合同会社ねっか奥会津蒸留所(福島) @nekkallc
・会津酒造(福島)
・鈴木酒造(福島)
・大和川酒造(福島)
・仁井田本家(福島) @niidahonke
・高橋庄作酒造(福島)
・さんべ農園(福島)
・奥会津金山(福島)
・天栄マカカレー(福島)
・達磨農園(福島) @daruma_nouen
・mel EURO VINTAGE (福島) @euroused_mel
・GALLERY STORE(東京) @gallerystore_jp
・nestwell (東京) @nestwell_official
・AMERICAN RAGCIE(東京) @american_rag_cie
・Style-G(東京) @style_g_shop
・株式会社イロエンターテインメント(東京) @irokawa1008
・東京フリマ(東京)

ケータリング
・出張ほぐれおにぎりスタンド(東京) @hogure_onigiri
・RAWSOUP(東京) @rawsoup.jp
・寄合(東京)

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