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　在京民放キー局5社を中心として2015年10月に始まったTVer。参加局、取り扱う番組も増え、2023年12月には月間動画再生数が3.98億回と過去最高を更新し、7月にはTVer単体の月間アクティブユーザー数（MAU）も2830万の過去最高記録に達するなど、無料見逃し配信サービスとしてのTVerはもはや定番となった。

　しかしTVerにおける再生回数は基本的に非公表で、期ごとの番組再生数ランキングなどで一部が明らかになるか、あるいは新記録を打ち立てた時などに番組側が発表する程度。そのため、視聴率をもって番組が語られてしまう状況が長らく続いている。

　そこで、TVer再生数ランキングの総合ランキングを定点観測することで、視聴率とは違ったドラマ人気をある程度は可視化できるのではないか、と考えたのが本企画だ。総合ランキングのトップ50の順位に対しポイントを付け、合計した結果からEI VISION独自の「TVerドラマ人気ランキング」をご用意した。今週は1月27日（土）～2月2日（金）までを観測（1日2回、決まった時間にTVer総合ランキングをチェック）した結果をお伝えする。

『不適切』『離婚しない男』が同率首位、TBSは『Eye Love You』も好調

　今回の結果は以下のとおり。

　先週初登場1位だったテレ朝土曜ナイトドラマ『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』は引き続き1位をキープ。第1話の見逃し配信（TVer、ABEMAなど）は先週発表時点で初回配信数のテレビ朝日歴代全番組史上1位の新記録だったが、さらにその記録を伸ばし、第1話の見逃しは400万再生突破。そして27日放送の第2話は、1日で110万再生と初回を上回るペースではあった……が、前週はTVer再生数ランキングでの最低順位が総合7位だったのに対し、今週は総合9位とわずかにダウンしており、トップ3滞在期間も前週4日→今週3日とダウン。初速はすごいが、勢いの持続力がやや減退している。次週も1位を維持できるか、気になるところだ。

　そして今週、『離婚しない男』と同率1位で初登場となったのが、TBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある！』。宮藤官九郎脚本で、阿部サダヲ（主演）、仲里依紗、吉田羊、磯村勇斗ら『恋する母たち』チーム再集結ということで事前の注目度も高かった作品だが、「この作品には不適切な台詞や喫煙シーンがふくまれていますが 時代による言語表現や文化・風俗の変遷を描く本ドラマの特性に鑑み 1986年当時の表現をあえて使用しています」という注意書きを放送中2度も示したことを盾に（？）コンプライアンス重視の現代を皮肉るように過剰に“昭和”を強調したセリフ・演出の数々が大きな反響を呼び、Xで国内トレンド1位に。1月26日～2月1日の見逃し配信（TVer・TBS FREE）は300万回を突破し、日本のNetflixでも複数日で「今日のTV番組」1位となるなど勢いがある。

　第3話にはロバート・秋山竜次が昭和の深夜番組『早く寝ナイトチョメチョメしちゃうぞ』のMCとしてゲスト出演予定など話題はまだまだ続きそうで、『離婚しない男』の強力なライバルとなりそうだ。

　続く3位となったのは、前週17位で初登場だったTBS火曜ドラマ『Eye Love You』。初回放送がXの世界トレンド1位となる反響があったことなど勢いがあることを先週紹介していたが、本人気ランキングで初のフル集計となる今週は3位まで上昇。TVerだけでなく、国内Netflixでも「今日のTV番組」1位を複数日にわたって獲っており、日によっては『不祥事』とワンツートップということも（Netflixでは『不祥事』よりも『Eye Love You』のほうが1位期間が長い）。

　また『Eye Love You』は、他人の心を読むことができるテレパスの主人公・侑里が、日本語は話せるものの脳内では韓国語を使っているため心が読めない韓国人男性・テオに振り回される……という設定どおり、テレビ放送ではテオの心の声に字幕がつかないが、TVerやU-NEXT等では「テオの”心の声”字幕付きSPバージョン」が配信されており、劇中でテオが何を考えていたかが（非韓国語話者には）わかる仕掛けがなされていることから、TVer人気が一層高まりそうだ。“韓国ドラマあるある”を織り込みながらテンポの速い展開、そして胸キュン要素も詰まっているため、リピーターも期待できるところ。

　今期のTBSドラマは日曜劇場の『さよならマエストロ～父と私のアパッシオナート～』がやや伸び悩んでいるが、特に配信人気では『不祥事』と『Eye Love You』が冬ドラマを牽引することになりそうだ。

『大奥』『グレイトギフト』が失速目立つ

　先週2位だったフジテレビ水曜ドラマ『婚活1000本ノック』は4位に後退となったが、本人気ランキングのポイントは伸びており、3位の『Eye Love You』とわずか8ポイント差。まだまだトップ3争いに食い込めそうなところだ。フジは、月9ドラマ『君が心をくれたから』も今週4位（前週3位）と健闘。前週比36ポイントダウンと勢いが落ちているが、5位以下との差が大きいのでまだ上位をキープできそう。今期2位となるお気に入り登録者数の伸びもさすがに落ちてきたが、3日0時時点で99.6万とまもなく100万の大台に。今期1位の『新空港占拠』（3日0時時点で102.9万で、今期ドラマで初の大台突破）との差はさらに縮まっている。

　だが、フジテレビ系のドラマは他の作品も落ち込みが目立ち始めている。カンテレ制作の月10ドラマ『春になったら』は前週比50ポイントダウンで前週4位から今週8位に。同じくカンテレ制作の深夜帯、火ドラ☆イレブン『リビングの松永さん』は前週比47ポイントダウンで前週11位から今週15位に。木曜劇場の『大奥』はなんと前週比91ポイントダウンで前週6位から今週10位に。金曜ドラマ『院内警察』は前週比35ポイントダウンで前週14位から今週はトップ15圏外の18位となっている。

　今週トップ3に食い込んだ『不適切』『Eye Love You』などの勢いに押されてある程度のダウンは理解できるが、特に『大奥』の下がり方は厳しいところ。TVer再生数ランキングの推移を見てみると、総合トップ10滞在期間が先週は4日あったが、今週は3日未満と大きく減少。総合トップ20滞在期間も1日以上減少しているほか、最低順位は総合25位（先週）から総合32位（今週）と下落幅も大きくなっており、明らかに失速している。『大奥』の場合、今回の令和販放送に合わせて過去シリーズの再放送・配信がされたこともあり、人気のあった過去作との比較が付きまわるのも大きいか。先週は今期のフジは配信面では全体的には好調としたが、今週の傾向を見るに失速が始まったようにも思える。

　また、失速というところで気になったのは、『大奥』と同じく木曜放送のテレ朝木曜ドラマ『グレイトギフト』。前週比112ポイントダウンという大幅減で、先週5位から今週12位に。TVer再生数ランキングの推移を見てみると、先週は総合1位を取れていたものの、今週は最高順位が総合3位となっており、またトップ3滞在期間が先週は2日あったのが今週は1日未満、トップ10滞在期間も先週3日から今週は2日と、失速が目立つ。視聴率でも、世帯9.8％の初回スタートから第2話7.6％→第3話6.9％とダウンしており、厳しい戦いを強いられているようだ。『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』『マイファミリー』など日曜劇場のヒットで知られる黒岩勉の脚本で、後者のように“ミステリとしては設定が甘いがどんどん新たな展開が起こる”というエンタメ作品ではあるものの、殺人球菌というあまりにマンガ的過ぎる設定と、渋めのキャスティングやテレ朝の視聴者層とがいまひとつ嚙み合わなかったか。

　テレ朝は先週も触れたとおり火曜ドラマ『マルス-ゼロの革命-』がさらに厳しい状況で、今週は初のフル集計週だったが、本人気ランキングで16位とトップ15圏外に。TVer再生数ランキングでは最高で総合6位、トップ10滞在期間はわずか1日。お気に入り登録者数も、まだ放送が始まったばかり（1月23日スタート）ながら、放送前の1月20日0時時点で42万から、54.1万（27日0時時点）→61.6万（2月3日0時時点）と、伸びも鈍い。1月26日放送開始の『不適切』が初回放送直後の27日0時時点で40.3万から翌週79.2万（2月3日0時時点）と＋29.9万も伸びているのとは対照的だ。深夜ドラマながら急速に伸びている『離婚しない男』（初回放送前の1月20日0時時点で14.9万→27日0時時点で48.1万→2月3日0時時点で60.4万）にもお気に入り登録者数で追い越されそうだ。

　1位をキープしている『離婚しない男』に加え、金曜ナイトドラマ『おっさんずラブ-リターンズ-』やオシドラサタデー『恋する警護24時』と、配信人気では深夜帯頼みとなっているテレ朝だが、『グレイトギフト』は挽回できるだろうか。次週の動きに注視したい。

〈先週の記事はこちら〉