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『ブギウギ』スターになってもスズ子が誰に対しても変わらぬ態度を取るワケ(第20週)

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イラスト/渡辺裕子

 スズ子(趣里)が羽鳥(草彅剛)に作ってもらった復帰作「東京ブギウギ」は大ヒット。スズ子は「ブギの女王」と呼ばれ、羽鳥も依頼が殺到して大忙し。街頭テレビで「東京ブギウギ」が流れれば笑顔の人々が集まる。スズ子は戦後の日本の人々を幸せにしていく光……のように見えるけれど、光が生まれれば、その明るさで自分たちがいる闇の深さを思い知る人たちもいる。街に立ち客をとるパンパンガールたちや、そして偶然再会したスズ子の幼なじみ、タイ子(藤間爽子)も。

 芸能雑誌の記事を読んで怒鳴り込んできたパンパンの元締め・おミネ(田中麗奈)には「あんたにアタイらの気持ちなんかわかりゃしない」と突き放され、病床のタイ子を心配しても「スターさんには関係あらへん」と戸を閉められる。スズ子は自分の歌でみんなを笑顔にしたいのに、住む世界が違うと感じる人たちからは拒絶される。まあ中にはそういう人たちもいるよねと忘れる方が簡単だし、マネージャーの山下(近藤芳正)も深入りするなと止めるけれど、スズ子は拒絶されて引っ込む人じゃない。相手に「入ってくるな」と境界線を引かれれば引かれるほど、「義理と人情や!」と叫びながら、引かれた線をぶっちぎって中に入っていく、それがスズ子。訪ねて行った有楽町のガード下でパンパンたちに囲まれて「福来スズ子なら歌ってみせろ」と迫られた時は声が震えてうわずりニセモノと思われてしまうくらいに小心者なのに、どうしても人を放って置けず、向き合って対話することを諦めない。

 スターになったスズ子が、弱い立場の人にも偉い人にも変わらぬ態度で接するのは、お風呂屋さんの娘だからかなあと、ちょっと思っています。どんな人も、裸になってしまえばみんな同じ人間だと知っていて、きっとわかりあえると思っているから。

 「義理と人情」で、人との境界線を飛び越え、芸の形も変えていくスズ子。明るい歌とダンスが売りだったけれど、羽鳥の新作「ジャングル・ブギー」では女豹となってすべてを食い尽くすような強さを見せつける。令和の今、もしもスズ子がここにいて、「ウワーオワーオワーオ」とステージで吠えたら、客席で一緒に吠えたい、あれは本当にかっこいい。どんなに心細い時でも、自分に言い聞かせるように「やったるでー!」と気合を入れて、いろんな境界線を越えていくスズ子の歌は、おミネやタイ子ちゃんたちだけでなく、令和の私たちも力づけてくれそう。しかし次週予告、茨田りつ子(菊地凛子)が本気で怒る展開らしい……まさか、スズ子が歌をやめる? いったいどうなるんでしょうか。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:趣里、水上恒司/草彅剛、蒼井優、菊地凛子、小雪、生瀬勝久、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
作:足立紳 櫻井剛
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里「ハッピー☆ブギ」
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
演出:福井充広、鈴木 航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原 誠ほか
プロデューサー:橋爪國臣
制作:NHK
公式サイト:nhk.jp/boogie

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

テレビ大好きイラストレーター。
テレビや映画について書いてるnote → http://note.mu/satohi11

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