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『ブギウギ』スズ子・愛子と大野が手をつなぐように優しさは連なっていく(第22週)

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イラスト/渡辺裕子

 「知ってるやろ?」と聞かれれば「知ってます」と嘘をつく。遅刻の理由を寝坊と言えずにごまかす。夢中になれることも目標もない。スズ子の新しいマネージャー・柴本タケシ(三浦獠太)は、なかなか困った人。だけど、実は私、彼の気持ちがよくわかるんです。人に叱られ続けて自己評価が低く、「きっとまた怒られる」という恐怖心で、嘘と言い訳から話す癖がついている。昔の自分を見ているようでなんとも恥ずかしく、第22週はタイトル通り「あ~しんど♪」な1週間でした。

 タケシが言い訳のループから抜け出すきっかけになったのが、家政婦の大野さん(木野花)の「嘘もごまかしもなく正直にぶつかって、一生懸命働け」という一喝でしたね。その一言が出る前の、前マネージャーの山下(近藤芳正)と大野さんの、お茶を飲みながらの静かな対話がとても良かった。家族を亡くした大野さんに、生きがいだった愛助(水上恒司)を亡くしたつらさから救ってくれたのはスズ子の持つ不思議な力だったと語る山下さん。「大丈夫や」と笑いかけて山下さんは去り、残された大野さんがタケシの背中を押す。その大野さんをスズ子に紹介した茨田りつ子(菊地凛子)は、幼い頃に大野さんに救われていて、大野さんは家事と仕事で多忙なスズ子を救う。そして大野さんとスズ子と愛子ちゃんは、家族ではないけれど家族のように、手を繋いで買い物に行く。誰かの恩をそのまま本人に返すのではなく、次に出会った別の誰かを同じように助け、その人がまた別の誰かを救い……一枚のドミノから始まるドミノ倒しのように、みんなの優しさが大きく美しく思いがけないかたちに展開していく1週間でもありました。

 大野さんの一喝で走り出したタケシは、スズ子の楽屋まで辿り着く。山下から「これからの人と仕事をすべき」の言葉を受け取っていたスズ子は、タケシに「よう見ときや」と言い残して圧巻のステージを見せつける。タケシが居眠りしていた稽古も、ぼんやり見ていた衣装合わせも、この日のためにスズ子が丁寧に並べたドミノのひとつ。スズ子のパフォーマンスのすばらしさと客席にあふれる笑顔を知ったタケシ。これからは、スズ子と一緒に「お客さんを喜ばせる」という目標に向かって進んでいく、名マネージャーになることでしょう。人生の先輩から教わってきたことを、今度はスズ子が若い人たちに教える番。でも山下さんも、先輩としてタケシにもうちょっと、仕事について教えておいてくれてもよかったのでは……引き継ぎ大事。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:趣里、水上恒司/草彅剛、蒼井優、菊地凛子、小雪、生瀬勝久、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
作:足立紳 櫻井剛
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里「ハッピー☆ブギ」
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
演出:福井充広、鈴木 航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原 誠ほか
プロデューサー:橋爪國臣
制作:NHK
公式サイト:nhk.jp/boogie

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

テレビ大好きイラストレーター。
テレビや映画について書いてるnote → http://note.mu/satohi11

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