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『ブギウギ』もう会えなくても、血がつながっていなくても「家族」(第23週)

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イラスト/渡辺裕子

 愛する家族と支え合って、ずっと離れずに一緒に過ごす。そんな暮らし方ができたらいいけれど、現実はなかなか難しい。

 ある日、羽鳥(草彅剛)からスズ子(趣里)に持ちかけられた、アメリカでの興行の話。ブギの本場に行ける大チャンス、しかし4カ月の長期滞在で、娘の愛子(小野美音)は連れて行けない。でもこれを逃したら一生行けないかもしれない。娘と歌のどっちを選べばいいのか……。

 ここで「あなたは心の中では行くって決めてるのよ。あと一押ししてもらいたいんでしょ?」とスズ子の背中を押すのが、スズ子とは対照的な生き方をしている麻里さん(市川実和子)なのがよかったですね。音楽のことしか頭にない夫・羽鳥の代わりに、子育てすべて引き受けている麻里さん。彼女のように母として生きても、仕事を選んでも、きっとどちらも後悔するし、どちらも楽しい。だから「私はこうしたい」のほうへ進むしかない。スズ子が頼りにできる「うるさいおばさん」な人生の先輩・麻里さんと大野さん(木野花)がいてくれてよかった。だけど、渡米するスズ子に「マミー!」と叫んで大泣きする愛子ちゃん、あの姿を見たら……私なら「やっぱりやめますー!」ってなってしまったかも。本気で悲しい時の子どもの泣き声でしたよね。愛子役の小野美音さん、演技力がすごい。

 あんなに自分を慕う愛子ちゃんと、4カ月も離れていたスズ子はどんなにきつかったでしょう。無事に帰国してまた会えてよかった……とホッとしたけれど、その1年後、今度はスズ子のもうひとりの家族、香川で闘病している父の梅吉(柳葉敏郎)が危篤に。

 「スズ子はワシとツヤちゃんのホンマの子やけん」「血ぃより濃いもんでつながってんねや。心と心でつながってんねや」と苦しいはずなのにスズ子に笑いかける梅吉は「父ちゃんブギウギ~」と、東京ブギウギの替え歌を歌い始め、スズ子も一緒に歌い、笑い、泣きじゃくる。自分がどんなにつらくても、目の前にいる人を喜ばせたい気持ち。町の人たちの笑顔の写真をたくさん撮っていた梅吉と、何があってもお客さんのためにステージに立つスズ子は、よく似ている。ふたりはホンマの親子でホンマの家族。

 昔、スズ子が自分の生まれの秘密を知った時、抱きしめてくれた弟の六郎(黒崎煌代)。優しい六郎はもういないけれど、彼が残した亀は、妻と息子を亡くした梅吉をなぐさめ、愛子ちゃんが梅吉に懐くきっかけとなる。そして亀と離れて寂しがる愛子ちゃんに、実の父の形見の時計が、スズ子から贈られる。梅吉の葬儀に来てくれた産みの母・キヌ(中越典子)を、スズ子はそっと許している。もしかしたら六郎は、亀の背中にちょこんと乗って、みんなをいろいろと助けてくれていたのかも。もう会えなくても家族、血が繋がってなくても家族。たくさんの別れがあるけれど、でもみんな家族として、これからもずっとスズ子を見守ってくれている。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:趣里、水上恒司/草彅剛、蒼井優、菊地凛子、小雪、生瀬勝久、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
作:足立紳 櫻井剛
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里「ハッピー☆ブギ」
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
演出:福井充広、鈴木 航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原 誠ほか
プロデューサー:橋爪國臣
制作:NHK
公式サイト:nhk.jp/boogie

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

テレビ大好きイラストレーター。
テレビや映画について書いてるnote → http://note.mu/satohi11

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