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『ブギウギ』「逃げても立ち向かっても、どっちでもいい」スズ子が選んだ“ズキズキワクワク”(第25週)

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イラスト/渡辺裕子

 スズ子(趣里)と食卓を囲むメンバー、カオスすぎではないでしょうか。娘、娘の誘拐未遂犯、その息子、家政婦、マネージャー。スズ子の人生のテーマ「義理と人情」の究極の形があの食卓なのかも。困っている人を放っておけないし、頼まれたら断れない。それがスズ子のいいところではあるのですが。

 そんな断れないスズ子の前に久しぶりに現れたのは、断らせない男・股野(森永悠希)。あんなふうに申し訳なさそうな笑顔でお願いされると、逆に断りづらいですよね……大スターの大和礼子(蒼井優)が、断らずに彼と結婚した理由がなんとなくわかったような。スズ子も、彼の娘・水城アユミ(吉柳咲良)に「ラッパと娘」を歌わせてくれという頼みにNOと言えない。相談した羽鳥(草彅剛)には厳しいことを言われ、茨田りつ子(菊地凛子)には「先生なら、あなた以外には歌わせないって言ってくれるって期待したんでしょ」とズバリと胸のうちを言い当てられる。しかし「自分の弱さまで取り込んで歌え、以前のあんたならアユミと並んで歌えるなんてとワクワクしたはずだ」と、ののしりながらスズ子を勇気づけることができるのは茨田さんだけ。

 スズ子の食卓では、かけっこで負けそうな愛子(小野美音)が「負けるのが嫌だから学校を休む」と言い出し、カオスらしく全然違う意見が飛び交う。「負けて傷ついてもいい」「傷つくのには慣れた」「逃げるが勝ち」「逃げるな」……。スズ子は「逃げたらそのことは一生忘れられへんで」と自分の思いを愛子に語る。若い歌手と比べられて負けるかもしれない怖さから逃げるより「同じ舞台で歌ったらどんなことが起こるか」と、ズキズキワクワクするほうを選ぶスズ子。義理人情で「ラッパと娘」使用にOKを出すのではなく、最終的には自分が楽しめるかどうかで決める、そういうスズ子でよかった。そして「逃げてもええし、立ち向こてもええ」と娘の決断を尊重するお母さんでよかった。「どっちにしろ、人生は大変な道のりや」。ほんとにそう。だからせめて、ワクワクなほうへ進みたい。

 男女歌合戦で「ラッパと娘」をはつらつと歌ったアユミに続いてスズ子が歌うのは「ヘイヘイブギー」。40代のスズ子は昔のような派手なダンスはできないけれど、円熟の歌声と表現で盛り上げ、客席もお茶の間も全員が「ヘイヘイ!」と叫ぶ。アユミの歌は心をつかむ歌、スズ子の歌は巻き込む歌。どちらもいいし、勝ち負けじゃないですよね。「ヘイヘイブギー」を子守唄として聴いた時はなんて優しい歌だろうと思いましたが、ステージではパワフルでハッピー。同じ歌なのに、歌い方で意味を変えることができる福来スズ子のすごみと、それを見事に演じ切った趣里さんがすばらしかったです。

 「昔から笑う門にはラッキーカムカム」=「福来」。来週はとうとう最終週。スズ子のカオスで愛のある食卓と、予告に出ていた懐かしいみなさんに、福が来ますように。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:趣里、水上恒司/草彅剛、蒼井優、菊地凛子、小雪、生瀬勝久、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
作:足立紳 櫻井剛
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里「ハッピー☆ブギ」
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
演出:福井充広、鈴木 航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原 誠ほか
プロデューサー:橋爪國臣
制作:NHK
公式サイト:nhk.jp/boogie

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

テレビ大好きイラストレーター。
テレビや映画について書いてるnote → http://note.mu/satohi11

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